この夏、我が家はフランスのブルターニュでバカンスを過ごしました。
「ブルターニュ」と聞いてもイメージがわかない方も多いですよね。
日本人ハネムーナーにダントツの人気を誇るモンサンミシェルはノルマンディー地方ですが、実はすぐお隣のブルターニュとの境めにあるのです。
そこで、今回はブルターニュについて3回に渡り、詳しくご紹介していきましょう。
1回目の今回は、ブルターニュのちょっと特別な歴史と魅力についてご紹介したいと思います。
2回目はグルメ・お土産編、3回目は人気観光地編をお届けしますよ!
1.実はパリから意外に近いブルターニュ地方!モンサンミシェルからもアクセス良好
2. ブルターニュってどこにあるの?どんなところ?
3.知れば旅が楽しくなる!ブルターニュの奥深い歴史
4.北と南とでも違う、ブルターニュの魅力
5.海岸に個人のお城が残されている風景もブルターニュらしい光景
6.パリとモンサンミシェルの往復だけじゃもったいない!
実はパリから意外に近いブルターニュ地方!モンサンミシェルからもアクセス良好
ブルターニュは南仏やアルザス地方に比べるとちょっと地味な印象ですが、実はフランスの中でも特別な歴史を持つ地域。
それは1532年にフランスに併合されるまで、ケルト民族由来の独自の文化と言語を持つブルターニュ公国という独立国だったからなのです。
ブルターニュの人々は、今でも自分のことをフランス人とは言わず、ブルトン人(ブルターニュ地方に住むケルト系民族)だと言う人も多いです。
そして、フランス人(ブルトン人以外)も、ブルターニュの人々をブルトンと呼びます。フランス人にとってもちょっとスペシャルな印象がある地方なのです。
そんなブルターニュは海に囲まれ内陸部は緑豊か。新鮮な魚介やブルターニュ発祥の本場のガレット(そば粉で作るクレープ)も美味で、素晴らしい景観と食とで大満足間違いなしの場所。
しかも、2017年7月からTGV(フランスの超高速列車)を使えば、パリからブルターニュの首都レンヌまで最短で1時間25分という近さ。
あの世界遺産のモンサンミッシェルへもレンヌからバスで1時間15分ほどで行けるのです。
ハネムーンをパリで、と考えてる方にはパリからも遠くないブルターニュへ。モンサンミシェルと合わせて滞在はいかがでしょうか。本当におすすめです。
それでは早速美しいブルターニュ地方をご紹介いたしましょう!
ブルターニュってどこにあるの?どんなところ?
ブルターニュの場所はフランス最西端のかなり突き出たフランス最大の半島。
気候は典型的なヨーロッパ特有の海洋性気候で1年を通して寒暖差が少ないのが特徴。
変化方海洋性気候のパリより夏は涼しく、逆に冬はパリより気温が高いことがほとんど。
ただし、大西洋からの北風が強いので冬はかなり寒く感じることが多いようです。
フランスでブルトンの伝統と文化を持つのは5つの県
このうち現在もブルターニュ地域圏に入っているのが4県あります。
中世の街並みが残る「カンペール」や地の果てという意味を持つ港湾都市「ブレスト」などがあるフィニステール県。
幻想的なピンクの花崗岩の海岸「コート・ド・グラニ・ローズ」や雄大な景観の「ディナン」などがあるコート=ダルモール県。
ヴァイキング(海賊)の街として有名な「サン・マロ」や歴史的建物が多く残る首都「レンヌ」などがあるイル=エ=ヴィレーヌ県。
海辺のリゾート地として人気の「キブロン」やブルターニュ公国の首都だった古都「ヴァンヌ」などがあるモルビアン県の4つ。
そして唯一、10世紀から16世紀までブルターニュ公国の中心地だった「ナント」や15世紀の邸宅が数多く残る「シャトーブリアン」などがあるロワール=アトランティック県だけが、1972年からお隣のペイ・ド・ラ・ロワール地域圏となっております。
モンサンミシェルはノルマンディ?ブルターニュ??
モンサンミッシェルまでレンヌからバスで1時間15分とご説明いたしましたが、ブルターニュとノルマンディーのちょうど間にあるモンサンミッシェルは公的にはノルマンディーになります。
理由は2つの地方の境界線になっているクエノン川がモンサンミッシェルの西に流れているため。
でもずいぶん長い間、ブルターニュとノルマンディーの間で論争があるようです。
ちなみにパリからモンサンミッシェルに行く際によく経由地となる、人気観光地サン・マロは逆にブルターニュの方に入っております。そりゃ論争が続くわけですね。
ブルターニュの人はボートで通勤!?バス代わりに利用
ブルターニュの沖合には何と800前後もの大中小の島々が浮かび、美しいエメラルドブルーの海や白い砂浜もあれば険しい断崖もあります。
そして、いくつもの湾があちこちに複雑に入り組んでいます。
その間を人々はバスがわりに船に乗ったり自家用の小型ボードで行き来。仕事に行くために毎日利用している方もたくさんいるのです。
私も利用したのですが、少し離れた島々は別として、乗船時間は15分とか20分とか短め。
料金も通勤に使われているくらいですからバスの値段とあまり変わらないんです。プチ船旅、ちょっと楽しいんですよ。
豊かな森や湖、川が流れる牧歌的な風景が広がる内陸部
そしてブルターニュの内陸部には森や湖、川があって緑豊かな牧歌的な風景が広がっております。
その中に古いお城があったり、石畳の中世の街並みが残る美しい街がたくさん点在しているのです。
このようにブルターニは海の国であり森の国でもあり、古都があちこちに残り、そしてブルトンたちは今もここで自分たちの歴史と伝統を守り続けているのです。
それでは最も重要なその歴史についてもわかりやすくお話しさせていただきましょう。
知れば旅が楽しくなる!ブルターニュの奥深い歴史
1532年までブルターニュ公国だった歴史をさらに遡ると、それはサン・マロ近くで発見された70万年前の石器にまで行きつきます。
フィニステール県のオディエルヌでは、45年前のヨーロッパ最古の火の痕跡。モルビアン県のキブロンでは紀元前7000年前の中石器時代の痕跡が発見されております。
そしてモルビアン県のカルナックには、紀元前5000年頃から人間の手によって造られはじめたという「メンヒル」と呼ばれる直立した巨石記念物が並んでいて人気観光地となっております。
ブリテン諸島からケルト人が移住を始めたのが3世紀後半ぐらい
このブルターニュにブリテン諸島(イギリス)から、ケルト人たちが移住をはじめたのは3世紀後半から、と言われております。
ちなみにケルト人とは古代ヨーロッパの主に西に住み、ケルト語を話した人たち。
徐々にヨーロッパ全土とブリテン諸島に散らばっていったのですが、その後ヨーロッパ大陸はゲルマンやローマ帝国の拡大があり、ケルト文明は影を潜めていきました。
でもケルト人たちは独自の文化を守り続けたのです。その中の1つがブルターニュなのです。
9世紀に統一国家となったブルターニュ
9世紀に3つの王国に分かれていたブルターニュはノミノエによって統合され、統一国家になりました。
10世紀初頭、ブルターニュはヴァイキング(海賊)に激しい攻撃を受けていましたが、ブルターニュ公アラン2世が撃破。
このアラン2世がフランス王ルイ4世と主従関係になったことから王国から公国となります。
しかし15世紀に入ってブルターニュ公フランソワ2世の時代にフランス王ルイ11世、その息子シャルル8世との関係が悪化。そして戦争で敗北。
フランソワ2世の娘で父の死後12歳でブルターニュ公を継承していたアンヌ・ド・ブルターニュはシャルル8世との結婚を余儀なくされます。
ルイ12世との結婚で再びブルターニュの主に返り咲いたアンヌ
そのシャルル8世が急逝すると、結婚契約に定められていたため、後継者であるいとこのルイ12世と結婚。
このルイ12世がアンヌがブルターニュ公を名乗ることを受け入れたため、アンヌはフランス王妃であると同時にブルターニュ女公でもあったのです。
そしてアンヌがブルターニュ公国を守り通し36歳で亡くなった、その17年後の1532年、フランス王フランソワ1世の時代に正式にフランスに併合されました。
この歴史の中でも特に印象的なアンヌは、公国最後のブルターニュ公として今もブルターニュのシンボル的存在。滞在した貸家にもアンヌの肖像画が飾られていたくらいなんですよ。
そして一番有名な郷土料理ガレットもアンヌがいたから誕生したと言っても過言ではないのです。
これについてはグルメ編の方でお話させていただきますね。
誇り高きブルトン人!
現在ケルト国と呼ばれているのは、イギリスのコーンウォール、アイルランド、マン島、スコットランド、ウェールズ、そしてここブルターニュの6つだけ。
今でもブルターニュ地方の街中には、フランス語と共に独自の言語であるブルトン語の表示が使われ、独自の国旗もあちこちで掲げられているのです。
こんな歴史があるから、ブルターニュの人々はブルトン人であるという誇りを持っているのですね。
北と南とでも違う、ブルターニュの魅力
さて、今回のバカンスでは私たちは北ブルターニュと南ブルターニュに滞在。
同じ地方なので距離がすごく離れているわけではないのですが、北ブルターニュと南ブルターニュ、雰囲気も天候も結構違うことにちょっと驚かされ、そしてどちらにも魅了されたのです。
ということで、私なりに感じたその両方の魅力をご紹介させていただきます。
北はブルターニュの中でも降水量が多く、天気の変化に富んでいる
で、上の写真は北ブルターニュの小さな町の港近くのカフェの1枚。8月半ばです。
お天気がとてもよい日でしたが風は少し冷たいので長袖でちょうどいいくらい。お2人のムッシューも長袖ですね。
そしてこれは翌日の別の海岸沿いで小雨が降ったり止んだりの1日。
滞在している間、こんな日が結構あって、後で知ったのですが、やはり北ブルターニュはブルターニュの他の地域に比べ降水量が多いのだそう。
ただし1日中雨が降るというのではなく夕暮れ時はよく晴れたりもしていて、とにかく天気がよく変わるという印象。それがまた変化に富んでいて面白いのです。
ちなみに季節の中で晴れの日が一番多いのは春から夏にかけてだそう。もし天候を重視するのであればその時を選んだ方がよいかもしれませんね。
北ブルターニュの春夏を彩る花といえば日本生まれのアジサイ!
石造りの建物はブルターニュ伝統で冬の強い風と寒さから守るため。今もたくさん建っているのです。
その重厚な建物の傍らで、少しくすんだ色のアジサイが咲いているのがブルターニュらしい光景。
19世紀に日本に滞在したドイツ人学者シーボルトがヨーロッパに持ち帰った日本生まれのアジサイですが、ここブルターニュでも春夏を代表する花。あちこちで美しく咲いているんですよ。
北ブルターニュの海岸は美しいブルーグレイ
ここは大きな波が打ち寄せる北ブルターニュの海岸。北の海らしい美しいブルーグレイの風景が絵になります。
泳ぐには水は少し冷たそうだけど、ちびっ子から渋いムッシューまで地元サーファーがたくさん。
ブルターニュの海では他にもスキューバダイビングも盛ん。お好きな方、興味のある方は参加してみるのもありですね。
北ブルターニュの家といえば石造りと印象的なブルー
ここは私たちが滞在した北ブルターニュの海辺近くの貸家。
やはり伝統的な石造りで、この青い窓枠を合わせるのがブルターニュらしい組み合わせなのです。
こんな家を見ると、今は私もですが、フランス人はすぐブルターニュだとわかるよう。
北ブルターニュの雰囲気によく合っていて素敵なんです。
南ブルターニュはちょっと南欧の雰囲気
そして、こちらが今度は南ブルターニュの海沿いの街になります。
街並みが明るくなってパステルカラーの家が増えます。日差しがかなり強くなったことにもびっくり。車で2時間弱移動しただけでぐぐんと南欧の雰囲気になりました。
南ブルターニュの海岸は海水浴客が!
南ブルターニュは海辺で海水浴をしている方もたくさん。
北ブルターニュの海では泳いでる人はそう多くなかったのですが、南ブルターニュではあちこちの海辺でこうしたカラフルな真夏の光景が見られます。
南ブルターニュの家は白壁とブルーの組み合わせ
海辺の街では、石造りの家の割合いがかなり減って、独特の青の窓枠は白壁との組み合わせが増えました。
降水量も北ブルターニュに比べ少なめ。お天気はやはり変わりやすいのですが、晴れの時間の割合が北ブルターニュよりもずっと多めになります。
たとえば朝かなり曇っていてもその後晴れてくることがほとんど。貸家の大家さんがそうおっしゃっていました。
この日も早朝はどんより曇っていてひんやりしていたけれど、徐々に空が明るくなっていって太陽燦々、ちょっとジリジリするくらいだった日。
海岸に個人のお城が残されている風景もブルターニュらしい光景
青い海と空、岩礁、お城のダイナミックな光景に思わず目を奪われました。
光に包まれた明るい南ブルターニュの海も陰影のある北ブルターニュの海もそれぞれ美しく、またその違いが興味深いのです。海だけじゃなく、街も、気候も、ですね。
パリとモンサンミシェルの往復だけじゃもったいない!
今回訪れてすっかり魅了されたブルターニュ。
日本ではまだそれほど知られておりませんが、逆にそこも狙い目。TGVでさらに近くなったので、これから大注目ではないでしょうか。
モンサンミッシェルは必ず行きたい!という方、かなり多いと思うのですが、すぐにパリにUターンはもったいないかも?しれませんよ。
次回はグルメ編。ガレット、魚介、郷土料理などなど、ブルターニュが誇る美食を、特産物が並ぶマルシェの楽しい様子と共にご紹介させていただきます。どうぞお楽しみに。
モンサンミシェル(フランス北西部)のホテル・レストラン・観光情報>>
<ブルターニュ関連記事>
・人気のモンサンミシェルにほど近いブルターニュってどんなとこ?(
1)歴史と魅力編
・人気のモンサンミシェルにほど近いブルターニュってどんなとこ?(2)グルメ・お土産編
・人気のモンサンミシェルにほど近いブルターニュってどんなとこ?(3)観光編