入賞作品

最近でこそ、鉄道オタクの女子をチラホラ見かけるようになったとはいえ、当時ではまだ珍しかったのではないでしょうか。列車の旅もいいですね。またおふたりで旅をしているのでしょうか。寝台列車もどんどん減ってしまっているので、ぜひまたお出かけください。

「鉄子との新婚旅行」

田村 靖彦さん(59才、奈良県在住)

鉄道好きだった妻との新婚旅行は、やはり列車の旅でした。当時の私たちが選んだ列車は、大阪駅22時発の夜行急行列車「きたぐに」でした。終着駅の青森に到着するのは翌日の夕方18時で、乗車時間は20時間にも及ぶものです。車中で食べるおやつや飲み物を大量に買い列車に乗りました。今で言う鉄子の妻はこれからの長い列車の旅に期待して、結婚式の疲れも見せずに目を輝かせています。時間に追われて満足に食べていなかった私は、発車前からおやつを口にしていました。

列車が動き出すとその心地良い揺れに、いつしか私は眠りに落ちていたのです。

鉄男誕生で賞
(写真はイメージです)

翌朝、妻の声で目を覚ますと車窓には、青い日本海が広がっていました。

「こうして海を見ると、やっと新婚旅行に来た気分になってきた」朝食はもちろん駅弁で、妻と5月の晴れ渡った空と海を見ながらの食事です。「良い眺めね」「うん、のんびりとした列車の旅も良いものだ」いつしか私も鉄子の妻のペースに引き込まれたようです。

私たちのハネムーン列車「きたぐに」は、東北の地を北へ北へと向かって走っています。

時折妻は列車の時刻表とガイドブックを取り出しては、今どのあたりか私に教えてくれました。また列車の旅だと二人で話す時間はたっぷりとあります。いつか子どもが生まれても、このような列車の旅を家族と一緒にしたいというのが妻の希望でした。

もちろん私も賛成です。なぜなら終着駅の青森に着いた時には、私もすっかり列車好きの鉄男になっていたからです。

その他の応募作品

妄想?暴走?列車に乗った楽しいハネムーンについてのエピソードです。
旅はまだ続いているのでしょうか。

もしも!

佐藤富子さん(64才、名古屋市在住)

以前、航空券まで手配した札幌二泊三日の旅を、葬式のためキャンセルしたことがある。-それ以来、北海道は末路の地だ。

友人から再婚相手とのハネムーンが「トワイライトエクスプレスで行った北海道旅行」と聞いてから私の頭の中では、「トワイライトエクスプレスで行く北海道旅行」がドンと腰を据える様になった。行く事が出来なかった北海道に対する未練があるいは憧れが、パンフレットを集めるようになった。

-トワイライトエクスプレスとカシオペアと北斗星で行く周遊。季節列車で行く体験見所巡り。飛行機でなく列車の旅が-西村京太郎の本による影響があったやも知れない?私の憧れをさらに大きくした。とにもかくにも仮想一週間のハネムーン旅行は、現実と関係ないところで始まった。発車してしまった列車はもう止められない。

-トワイライトエクスプレスは、ロイヤルルームでなくていいのよ、B個室ツインにはして欲しい!小樽・函館の夜景は見たいね!旭山動物園へも行きたい!知床観光船にも乗りたい!ニセコ・富良野・美瑛で花に囲まれるのもいいね!石狩なべ。ハナマス丼。ジンギスカン等現地で食べたいものがいっぱい!

ところが問題発生。-オプション料金はお二人様からなのだ。お一人様では受け付けてもらえないのだ。

ハネムーン計画より先に一緒に行く相手を探さねばならない。仮想ハネムーンのシステムはもう動き始めてしまった。-歓声を上げてラフティングする私と傍らにいる誰か?観光船を乗った後のウトロ温泉も素敵ね!感激する私と傍らにいるハニー?

「誰か私を北海道へ連れて行って!」-パンフレットは答えてくれない!-答えがなくても仮想列車は、走って行く。



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